値上がりや配当の他に、おまけがつくのがオトクに感じますよね。
ですが、投資初心者の方は、ふるさと納税と同じ感覚で始めると、損をするかも知れません。
人気の株主優待ですが、最近は、以前と少し違ったトレンドが大きく3つあります。
(1)廃止と新設の件数は同じ?
最近のトレンドの一つ目は、廃止と新設の件数が徐々に近づいていることです。
株主優待の実施企業数は、2022 年 9 月時点で、全上場企業の約 4 割に当たる 1,463 社となっています。
直近の10年ほどは増加傾向でしたが、2019 年をピークに、廃止する企業が増えてきました。
廃止の原因としては、まず、東証再編による必要な株主数の定義が緩和したことが挙げられます。
また、優待が受けられない機関投資家や外国人という株主が存在することや、優待を受ける権利が持株数に比例していないことから、「公平な利益還元」を理由としていることも挙げられます。
ですが、廃止ばかりではなく、新設する企業もあります。
21年9月以降、廃止と新設の件数の差が徐々に縮小してきています。
23年5月時点ではほぼ同数になっています。
新設する企業が増えてきた理由としては、コロナ禍が過ぎて業績の見通しが立ちやすくなったことや、個人投資家を増やそうとする動きなどが考えられます。
(2)廃止と増配のセットで株価の動きがちがう
トレンドの2つ目は、廃止と増配のセットで株価の動きが違うことです。
最近は、廃止と同時に増配を発表する企業もあります。
廃止を発表した後は、どちらの株価もガクッと落ちていますが、廃止だけを発表した企業がマイナス4.5%なのに対し、同時に増配を発表した企業はマイナス1.4%と、下げ幅に違いが出ています。
優待の恩恵を受けにくい機関投資家から好意的に受け止められたことや、業績不振による廃止ではないなどが株価に反映されたと考えられます。
(3)株式分割で拡充する銘柄もある
トレンドの3つ目は、株式分割で拡充する銘柄もあることです。
「株式分割」とは株主への利益還元の一つで、1株を2株、というように分割することで、高額の株式を細かく分けて、小額の株式をたくさん増やすことです。
東証は、個人投資家が投資しやすいように、投資額が高い銘柄には50万円未満を目安に引下げを促しています。
その影響からか、今年に入ってからは、株式分割をおこなう企業が増えてきました。
なかには、優待が受けられる最低保有株数を分割前と同じに据え置く企業があります。
例えば、7月に1株を25分割したNTTの場合、分割前は最低投資額は40万円位でしたが、現在は1万円台で購入できます。
優待内容はdポイントですが、単純計算で優待利回りが25倍になったと言えます。
マツキヨココカラもそうですね。
1株を3株に分割しましたが、最低投資額が3分の1になるため、優待利回りは3倍になります。
ただ、値上がりも期待したいという場合は、注意が必要です。
株式分割は、一般的に、成長期待や買いやすさから株高要因になるとの見方があります。
ですが、最近では東証の要請に応じただけというケースも多く見られ、分割自体が株価の好材料になりにくい場合があります。
2.株主優待の基本
(1)株主優待とは
そもそも、「株主優待」とは、企業が株主に自社製品やサービスなどをプレゼントする制度です。
長期保有する個人株主の増加、自社商品の広告宣伝効果などを期待して優待を実施するケースが多いようです。
(2)優待利回りとは
還元率が高い優待銘柄を見つけるための指標として、「優待利回り」というものがあります。
「優待利回り」とは、投資金額に対する株主優待の割合のことです。
株式の購入金額に対して、株主優待の価値がどれくらいあるかを数値化したものになります。
計算式は、「優待利回り(%)=株主優待の価値(金額換算)÷投資金額×100」。
一般的に、数値が高いほどお得な優待とされていますが、株価が下がることで優待利回りが高くなっているだけという場合もあります。
指標としては、もう一つ「配当利回り」もあります。
優待銘柄を検索すると、「優待利回り」にあわせて、「配当利回り」も表示されているこが多くあります。
「配当利回り」とは、投資金額に対し、1年間でどれだけの配当を受けることができるかを数値化したものです。
計算式は、「配当利回り(%)=1株当たりの年間配当金額÷1株購入価額×100」
一般的に数値が高いほど、良いとされていますが、こちらも優待利回りと同じように株価が下がることで、配当利回りが高くなっているだけという場合もあります。
(3)優待をもらうための条件
そして、優待をもらうためには、クリアすべき条件が2つあります。
①必要な株数
条件の1つ目は、必要な株数です。
100株とする企業が多いですが、中には200株とか500株のような場合があります。
②権利確定日
条件の2つ目は、「権利付最終日」まで株を保有していることです。
優待をもらう権利を得るスケジュールとして、覚えてほしい日があります。
それは「権利確定日」。
優待をもらえる権利が確定する日で、この日の株主名簿に名前が載っている必要があります。
確定日は銘柄によって異なります。
月末か20日が多いですが、それ以外の場合もあるかも知れません。
権利確定日に名前を載せるためには、その2営業日前の「権利付最終日」までに購入し保有しておく必要があります。
権利付最終日の翌営業日を「権利落ち日」と言い、この日に売却しても優待の権利はもらえます。
権利確定日が9月20日の場合、権利付最終日は2023年9月15日(金)。
権利確定日が9月末日の場合、権利付最終日は2023年9月27日(水)になります。
土日祝日など、取引所が開いていない日はカウントされませんので、注意してください。
人気のある優待銘柄は、権利付最終日に近づくにつれ、株価が上がる傾向があります。
少しでも安く購入したい場合は、「権利落ち日」で株価が下がったところを狙うという方法もあります。
ただし、当然ですが、必ずしも安く買えるとは限りません。
そのうえ、次の権利確定日まで、権利がもらえるのを待たなければいけません。
3.選ぶときのチェックポイント
最近、株主優待は人気が出て、やや割高になっている銘柄もあります。
優待を実施している企業は多くありますから、どの銘柄を買えばいいのか、投資初心者の方がチェックするポイントを5つお伝えします。
(1)選ぶ基準を決める
チェックポイントの1つ目は、選ぶ基準を決めることです。
基準としては、「優待内容」「投資金額」「優待利回り」「優待品の受取時期」「値上がり益」などがあります。
例えば、よく使う日用品が欲しいのか、投資額は50万円未満に抑えたいのか、そうめんのように夏に受け取りたいとかですね。
値上がり益も合わせて期待したい場合は、配当利回りや株価動向もチェックした方がいいですね。
ただ、優待内容より値上がり益を優先したいときは、「優待利回り」より「配当利回り」を重視した方がいいでしょう。
優待と配当の両方があればオトクな感じはしますが、優待利回りが高い銘柄というのは株価が下がっているだけの場合や株価も上昇するよりは緩やかに動く傾向があります。
(2)会社の規模は充分かどうか
企業の規模を表す数値として、「時価総額」というものがあります。
優待利回りの高い銘柄の中には、この時価総額が少ない企業もあります。
100億円以下または、100億円前後の東証プライムに上場している企業は、上場を維持するために、優待を廃止し配当を重視する可能性があります。
株価にとっては、それも好材料になりますが、優待は欲しいという場合は少なくとも100億円を超える有名企業を選んだ方が無難かも知れません。
(3)業績悪化や減配が続いていないか
チェックポイントの3つ目は、業績悪化や減配が続いていないかどうかです。
業績が悪化すると、当然優待どころではありませんから、廃止する可能性も高まります。
(4)株価が乱高下していないか
チェックポイントの4つ目は、株価が乱高下していないかどうかです。
権利付最終日の前後は、ある程度、株価は動くものです。
ですが、なかには、その変動幅が激しい銘柄もあります。
「500円のQUOカードがもらいたかったのに、あっというまに1万円分も下がった」なんてことも、あります。
あえて、そういう動きを利用して、信用取引を利用して短期で利ザヤを狙ったり、株価の下落リスクを抑えるために「つなぎ売り」をするなどの手法もありますが、投資初心者の方は、スタンダードに現物で株価が乱高下しない銘柄を選んでいきましょう。
(5)廃止するような特徴はないか
チェックポイントの5つ目は、廃止するような特徴はないかどうかです。
せっかく、購入した銘柄なのに、「優待の廃止」が発表されると、楽しみが減るだけでなく、株価の値下げ要因にもなります。
優待を廃止する企業に共通する特徴として、
①優待内容が自社製品以外(QUOカードやカタログギフトなど)
②優待内容を頻繁に変える
③長期保有限定に切り替え
などがあります。
他にもいくつかありますが、最低限この3つはチェックしましょう。
株主優待は、永遠に続くという保証はありません。
どの程度まで投資するか、優待が廃止されたときにはどうするか、じっくり考えて購入した方がいいですね。
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