投資初心者がやってはいけないことは、全世代とも基本的には同じです。
ですが、特に気を付けるポイントは、年代によって違ってきます。
1. 50代60代でも、まだ間に合う!
50代60代と言えば、お子さんも独立し、教育費やマイホームのローンなどの大きな出費も落ち着き、時間的に余裕が出やすい年代です。
老後の不安が現実味を帯びてきて、その分、将来のプランも立てやすいでしょう。
「50歳で投資を始めるのは、もう遅いですか?」という質問をお受けすることがありますが、そんなことはありません。
例えば、50歳から65歳までの15年間、積立を始めたとします。
運用成果(リターン)は、年率3%と仮定しましょう。
毎月10万円の場合は、65歳の時に、投資元本1,800万円とリターン 470万円を合わせて2,270万円が受け取れます。
毎月5万円としても、元本とリターンの合計で1,135万円が受け取れます。
50代は、30代や40代に比べて収入が増えるため、経済的なゆとりが出やすくなります。
ここは、少し頑張って積立金額を増やしたいところです。
最近は、定年後も働く方は増えてきました。
リタイア後に資産を取り崩す場合は、働いた収入に加え、資産運用をすれば資産寿命を延ばすことに繋がります。
これまで、投資を全くしてこなかったとしても、今から始める価値は十分にあります。
2.50代・60代の投資初心者がやってはいけないこと
(1)基本は同じ、でも若年層とは違う
どの世代にも共通して、投資初心者がやってはいけない基本的なものはありますが、注力するポイントは世代によって異なります。
20代・30代の若年層はライフイベントが多いため、資産をつくる「資産形成」がメインになります。
50代・60代は手元の資産を減らさないことがメインになります。
このように、世代によって投資の目的や手法などは変わってきます。
また、残された運用期間も異なります。
目標金額が同じでも、20代と比べると運用期間が短くなる分、1年間のリターンを高くする必要があります。
なかには、運用成果を追求しすぎて、つい無理をしてしまう方もいます。
若年層は、失敗しても時間的に取り戻すことはできますが、50代以上はそういうわけにはいきません。
(2)50代・60代の投資初心者がやってはいけないこと
①一度に大金を投入する
退職金をもらったら、投資をしようと思っている方もいらっしゃるでしょう。
大金を手にして気が緩むかもしれませんが、そこは冷静でありたいものです。
国債のように比較的解約しにくい商品を購入したり、退職金の額を今の生活費で割って何年くらい持つか計算したりして、心を落ち着かせましょう。
売買のタイミングを計るには、ある程度の経験が必要です。
一度に大金を投入するのではなく、暴落したときに追加投資ができるくらいの余裕は持っておきましょう。
②1つに集中して投資する
「卵を一つのカゴに盛るな」という投資格言があります。
1つの資産に集中して投資すると、その資産が暴落したときには全財産を失ってしまうという注意を表しています。
投資の世界では、リーマンショックのように、まさかと思うような事態が起こります。
そういったリスクは、複数の資産に分散すればするほど、軽減していきます。
実際、投資信託に限って言えば、リーマンショック後の回復が早かったのは、分散投資していた資産です。
③複雑な商品に投資する
「証券・金融商品あっせん相談センター」の発表によれば、トラブルとなる金融商品は、仕組債が半数以上を占め、年代は60代以上が多いようです。
やはり、理解ができないものへの投資は、避けた方がいいでしょう。
④高すぎる利回り商品に投資する
「元本保証」や「毎月5%の配当を約束」しているような商品は、危険です。
そもそも投資は、元本保証ではありません。
また、毎月5%を年率に換算すると60%という極めて高い数字になります。
もしかすると、投資詐欺の可能性もあります。
⑤高すぎる成果を狙う
利益を追求するあまり、指数の数倍のリターンを目指すレバレッジ商品など、初心者には危険な投資に手を出してしまうこともあります。
「大きく儲けたいから、この商品に賭ける」という期待は、失敗のもとです。
50代60代の投資初心者は、まず安定した商品から始めた方がいいでしょう。
3.50代・60代の投資初心者がするべきこと
(1)投資を始める前に準備する
何の準備もせずに、いきなり投資を始めることは失敗のもとです。
まずは、最低限、準備することは3つあります。
①リタイア後の収支を試算する
老後資金のためとはいえ、投資は、本来、余裕資金でおこなうものです。
リタイア後の生活費がどの程度かかるのか、年金はどれくらい受給できるのか、毎月の収支を試算して、無理のない金額で投資をしましょう。
②投資の目的をもつ
海外旅行は年に何回行きたいとか、ゆとりある老後を送りたいとか。
そんな目的があれば、投資が長続きするうえに、相場の変動にも動揺しなくてすみます。
また、老後の生活が具体的に見えることで、今の日常生活でも節約したり、出費の優先順位を決めたりなど、お金の管理にメリハリがでます。
③投資について勉強する
投資について学ぶことで、失敗するリスクを減らし、効率的な資産運用を実現することができます。
また、投資詐欺に対してもアンテナが高くなります。
(2)リタイア後も投資を続ける
老後資金を運用しながら取り崩すことで、資産寿命を延ばすことができます。
例えば、65歳のとき、2,000万円を毎月10万円ずつ、取り崩すとします。
何もしなければ、81歳くらいで枯渇しますが、仮に年3%で運用すれば、6年ほど延長し87歳まで資産寿命を延ばすことができます。
また、年齢を重ねるとごとに、医療費や介護費などの思わぬコストがかかる場合がありますから、そういう事態にも備えておきたいものです。
(3)「攻め」と「守り」の資産配分を考える
50代・60代の投資は、時間や収入に制限があります。
基本的には、比較的値動きが安定している債券のように資産を減らさない「守りの資産」で運用した方がいいでしょう。
購入後、長期間で保有すれば、元本割れリスクを軽減できます。
過去の実績にはなりますが、国内外の株と債券に均等に分散投資した場合は7年、世界株式に投資した場合は15年保有で、元本割れしなかったと言うデータもあります。
15年くらい運用できるのであれば、日本の債券は低金利ですから、株式を中心とした「攻めの資産」での運用も選択肢になります。
10年・15年以上の長期間で運用し、一定の金額を積立し、世界の資産に分散して投資する。
こういった「長期、積立、分散」を行うことで、よりリスクを下げながら、ある程度の利益も期待することができます。
年齢を重ねるごとに、その時々に応じて「攻めの資産」と「守りの資産」の配分を変えていきましょう。
どのように投資をすればいいのか迷ったときは、投資信託がいいでしょう。
でも、国内債券だけで運用している毎月分配型の投資信託は、低金利で運用成績がマイナスになっているものも多くあるため、よく調べてから購入しましょう。
4.信頼できない担当者を見抜くポイント
ここまで、50代60代がやってはいけないこと、するべきことをお伝えしましたが、投資初心者にとっては自力で研究し、自分にあった投資を探すことは至難の技です。
さらに年齢を重ねると、複雑な金融商品を理解したり、タイミングに応じて即座にポートフォリオを見直したりすることは、難しくなってきます。
そんなときは、銀行や証券会社の担当者に頼らざるを得ないこともあるでしょう。
そこで、重要になってくるのは、その担当者が信頼できるかどうかを見極めることです。
最近では、お客さまの理解度や属性に沿った提案をする「適合性の原則」や、お客さま本位の業務運営を目指す「フィデューシャリー・デューティー」が、だいぶ浸透しています。
強引な担当者は、以前に比べて少なくなっているとは思いますが、皆無ではないため信頼できない担当者を見抜くポイントご紹介します。
(1)リスクやコストより、メリットばかり話す
投資は、利益が期待できますが、当然リスクも伴います。
値上がりのメリットだけでなく、どういう状態になると損をするのか、購入や保有中にかかるコストはどうかなど、コチラの許容範囲かどうか、適切に説明することが望まれます。
(2)相場低迷のとき、連絡してこない
勧めた商品が値下がりすると申し訳なくて、連絡しにくいのかも知れませんが、金融機関の営業担当者として、最もしてはいけないことです。
どんな原因で下がっているのか、今後の見通しはどうなのか、お客さまがどうしたいのかを聞くことは、必ずおこなうべきです。
(3)具体的・丁寧なアドバイスがない
例えば、売買について、アドバイスを求めた時に、理由もなく、「様子を見ましょう」と言うだけの場合も、注意が必要です。
「不安であれば、半分だけ売りましょう」とか、「この上昇相場でも動かないので、他にスライドしましょう」とか、そのときの相場状況に応じて、納得のいくアドバイスをしてくれるのが望ましいところです。
今は初心者でも、将来は自力で投資ができるように、投資の方法を丁寧にわかりやすく説明してくれることが、信頼できる担当者です。
5.まとめ
50代60代の投資は、ライフイベントの数や目的、運用スタイル、運用できる期間が20代・30代などの若年層とは違います。
失敗しても取り戻すことはできない世代は、資産配分を考えながら、投資をする必要があります。
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