この時期、一般NISAを利用されている方は、金融機関から「NISA非課税期間終了」のお知らせが届いているかも知れません。
期限内に手続きをしないと、損をする場合もありますので注意が必要です。
1.非課税期間終了とは?
一般NISA口座の非課税期間には、投資した年から最大5年間という期限があります。
今年は、2018年に一般NISAを利用して投資信託や株式を購入した方に通知されています。
何も手続きせず、そのままにしておくと課税口座に移管され、2023年以降の売却時に課税されてしまいます。
非課税期間を延長したい場合(ロールオーバー)は、所定の手続きが必要です。
2.非課税期間終了時の選択は3つ
NISA口座の非課税期間終了時の選択は、「課税口座へ移管(非課税期間を延長しない)」「ロールオーバー(非課税期間を延長する)」「年内に売却する」の3つがあります。
なお、売却や購入時には、受渡ベースで年内になるか翌年になるか注意して取引しましょう。
(1)課税口座へ移管(非課税期間を延長しない)▶手続き不要
ロールオーバーの手続きをしなかった場合、自動的に「特定口座」または「一般口座」へ移管されます。
翌年の非課税枠で他の商品を購入できます。
NISAの非課税枠を利用せずに継続保有できるのはメリットですが、移管後に値上がりして売却した場合は課税されるのがデメリットです。
移管時の取得価格は、ロールオーバーと同じく年末の時価(終値に相当する金額)となるため、商品が値上がりしているか値下がりしているかで2023年以降の売却時に支払う税金が変わってきます。
■移管時に値上がりしていた場合
一般NISA120万円で購入し、非課税期間終了時に150万円に値上がりしていると、取得価格は150万円に変更されます。
2023年以降に170万円で売却すると20万円の利益に課税されますが、110万円で売却しても利益がないため税金がかかりません。
■移管時に値下がりしていた場合
逆に値下がりしていた場合は、注意が必要です。
一般NISA120万円で購入し、非課税期間終了時に100万円に値上がりしていると、取得価格は100万円に変更されます。
2023年以降に130万円で売却すると、本来は10万円の利益のはずが30万円の利益とみなされ課税されます。
80万円で売却しても利益がないため税金はかかりません。
(2)ロールオーバー(非課税期間を延長する)▶手続き必要
ロールオーバーとは、翌年のNISA枠へ移して非課税期間を再度5年間延長することです。
手続きの期限は、11月末や12月末など、利用している金融機関で異なります。
「非課税口座内上場株式等移管依頼書」(名称は金融機関で異なります)などの必要書類を返送するか、オンラインなどの入力手続きが必要です。
手続きをしない、または所定の期限に間に合わなかった場合は、課税口座に移管されます。
なお、つみたてNISAはロールオーバーができません。
■メリット
①最長10年間、非課税投資ができる
長期運用によって、リスク低減や複利効果期待できます。
②非課税投資枠上限を超えても移管できる
例えば、商品が140万円に値上がりし、非課税投資枠120万円の上限を超えていても、翌年のNISA枠に140万円全額を移管できます。
■デメリット
①損失の場合、メリットがない
NISAは、他の口座との損益通算(利益と損失を相殺すること)ができません。
損益通算すれば課税所得金額を減らすことができる場合でも、NISA口座の損失は無いものとされるため、非課税の恩恵が受けられません。
②翌年の非課税枠を消費する
翌年の非課税枠を年末の時価(終値に相当する金額)に基づいて使用します。
120万円未満を移管する場合は残額の非課税枠を利用できますが、120万円以上を移管する場合は新規の買付ができません。
③同じ金融機関でないと、ロールオーバーできない
2018年に購入後、NISA口座を他の金融機関に変更した場合は、元の金融機関に戻さなければロールオーバーできません。
④つみたてNISAに変更していると、ロールオーバーできない
一般NISA口座の開設後に、つみたてNISAに変更した場合、つみたてNISAへのロールオーバーはできません。
ロールオーバーしたい場合は、翌年分を一般NISAに変更する必要があります。
(3)年内に売却する▶手続き不要
売却益は非課税で受け取れますが、損失が出ていても、他との損益通算はできません。
受渡ベースで年内となる期日内に取引しましょう。
3.5年後の選択はどうする?選択のポイント
どれを選択するかは、相場動向や投資スタイルによって異なるため、個々の判断が必要です。
一概に答えがでるものではありませんが、以下に、ご参考としてケース別のポイントを記載します。
(1)課税口座への移管が向いているケース
前述したとおり、課税口座での取得価格は移管時の時価になるため、値下がりしている場合は慎重に検討しましょう。
①他に運用したい商品がある場合
ロールオーバーしなければ、翌年度の非課税枠を他の運用商品の購入に利用できます。
新たな商品の購入額が120万円未満であれば、その差額分だけロールオーバーするという方法もあります。
②今後、値下がりしそうな場合
ロールオーバーを選択後に損失が出た場合、NISAの非課税メリットが活かせません。
しばらく運用状況をみるのもいいですが、値上がりの期待が薄いようであれば売却した方がいいかも知れません。
③今は値下がりしているが、将来値上がりが期待できる場合
非課税期間終了時には含み損でも、今後値上がりが期待できる場合はしばらく様子をみるのもいいでしょう。
ただし、移管後に値上がりして売却した場合は、課税対象となります。
(2)ロールオーバーが向いているケース
商品の一部のみをロールオーバーすることも可能です。
個別商品の見通しによって使い分けてもいいでしょう。
①翌年に、新たな商品の購入予定がない場合
②既に含み益はあるが、さらに上昇が期待できる場合
他の商品より保有商品の方が期待できそうであれば、さらに非課税メリットを活かしたロールオーバーが有力な選択肢になります。
③今は値下がりしているが、将来値上がりが期待できる場合
値下がりした資産をロールオーバーした後に、値上がりしても課税されません。
④NISAの非課税効果を最大限に利用したい場合
⑤保有商品の配当利回りが高い場合
(3)年内の売却が向いているケース
①資金が必要な場合
②他に運用したい商品がある場合
ロールオーバーしなければ、翌年度の非課税枠を他の運用商品の購入に利用できます。
継続保有したい場合は、課税口座へ移管するのも方法です。
③満足した利益が出ている場合
NISAの非課税期間内は、売却益に課税されません。
売却金額を元手に新たな投資もできます。
④今後、値下がりしそうな場合
ロールオーバーや課税口座への移管後に損失が出た場合、NISAの非課税メリットが活かせません。
利益がでていれば利益確定、損失が出ていれば別の商品に期待した方がいいかも知れません。
⑤つみたてNISAに変更したい場合
NISAは「一般NISA」か「つみたてNISA」どちらかの選択制です。
「一般NISA」で損失が続くのであれば、「つみたてNISA」で長期リスク分散投資を検討するのも一案です。
4.補足:新NISAへの移行
現行の「NISA」は2023年で終了し、2024年以降、毎年20万円を上限に積み立てする1階と、毎年102万円を上限とする2階建ての新しいNISAに変わります。
「一般NISA」で2019年以降に購入した商品は、新しいNISAへのロールオーバーが可能です。
ただし、監理銘柄および整理銘柄に指定されているものと、ヘッジ目的等以外でデリバティブ取引による運用をおこなっているものはロールオーバーできないため、売却か課税口座への移管を選択することになります。
2024年に新しいNISAが始まると、投資初心者は1階部分の積立から利用することになり対象商品は投資信託に限られます。
投資未経験で、「NISA」を利用した株式投資を検討している方は、今のうちから始めた方がいいかも知れません。
制度内容がほぼ確定している「新NISA」ですが、現在、金融庁が制度の恒久化や非課税限度額の拡大など更なるNISA拡充を求めており、内容変更の可能性が高まっています。
いずれにしても、12月に発表される税制改正大綱で骨子が分かるでしょう。
5.まとめ
2018年に一般NISAを利用して商品を購入された方には、今年は非課税期間終了の年です。
利用している金融機関で期限内に手続きをしないと、思いがけず損を被る場合があります。
含み益がある商品をロールオーバーすると非課税効果はさらに高まります。
しかし、運用状況や投資スタイルによってはロールオーバーしない方が良いケースもあり、個別の判断が必要です。
非課税期間終了の通知がきたら、商品の運用状況を確認し、期限切れで後悔しないように早めに選択しましょう。
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