親の介護でやってはいけないこと
- kaori34
- 2022年7月17日
- 読了時間: 6分
最近、資産運用の相談の合間に、親御さんの介護の話になることがあります。
特に40歳代~50歳代の方には関心が高い話題でしょう。
厚生労働省の調査(2016年)によると、平均寿命と健康寿命の差は男性8.84年、女性12.35年となっています。
これは日常生活に制限のある「不健康な期間」を意味し、医療費や介護費の増加により家計に大きな影響を及ぼすことになります。

やってはいけないこと3つ
1.介護に自分のお金をつかう
介護費用は、親のお金から出してもらうのが原則です。
生命保険文化センターの調査(2021年度)によると、介護にかかる平均期間は5年1ヵ月、費用は月額平均8.3万円、一時平均74万円。実に合計約580万円にもなります。
自分のお金をつぎ込むと将来自分が困ることになりかねません。
2.介護のために仕事を辞める
家族の介護のために仕事を辞めることを「介護離職」と言います。
総務省「平成29年度就業構造基本調査結果」によると、介護離職者数は約9万9千人。
離職することは、介護に集中でき施設への入居費用を抑えることができますが、大きな収入源がなくなります。
介護後の再就職は困難となり、将来の自分の老後の生活費をひっ迫することになりかねません。
3.誰にも相談しない
要介護者のために時間をつかっている時点で、「介護者」と自覚しましょう。
親せきや友人と話し、介護経験者の知恵を借りることで、経済的にも心情的にも負担が少しでも軽くなります。
備えておくこと7つ
1.親の意向をある程度聞いておく
元気なときでなければ話し合うタイミングは難しいかもしれません。
できるだけ親の意向に沿い、判断に迷ったときや介護者の意見が分かれたときなどの参考にしましょう。
例)治療行為、介護の場所(在宅か施設か)、行きたい場所など
2.親の経済状況を把握しておく
財産によって、介護の方向性が決まることもあります。
施設の料金は、高級なものから経済的基準で安価に入居できるものまでさまざまです。
最終的には、財産に見合った施設を選択することになります。
3.介護保険サービスについて知っておく
介護状態の度合い(要支援1~要介護5)によってさまざまなサービスがあり、原則65歳以上になれば市区町村に申請し認定を受けた後に利用できます。
(1)自宅で利用できるサービス
・訪問介護(ホームヘルプ)
・訪問看護(看護師)
・福祉用品貸与(車いすなど)
(2)施設(日帰り)
・通所介護(デイサービス)
・通所リハビリテーション(デイケア)
(3)施設(滞在)
・短期入所生活介護(ショートステイ)
・特定施設入居者生活介護
・特別養護老人ホーム
・小規模多機能型居宅介護
・グループホーム
・介護老人保健施設
(4)定期・臨時
・バリアフリー改修の補助
・介護タクシー
・定期的な巡回
・臨時通院の対応
など
4.仕事と介護を両立するための制度を知っておく
会社員の場合は、介護者への公的な制度があります。※関係法令「育児・介護休業法」
また、会社によっては独自の制度を導入している場合があります。
(1)介護休業
対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業できます。
また条件を満たせば介護期間中に、雇用保険から休業前賃金の67%が支給されます。
(2)介護休暇
対象家族が1人の場合は年間5日まで、2人以上の場合は、年間10日まで取得できます。
(3)短時間勤務の措置
対象家族1人につき、介護休業とは別に利用開始から3年の間で2回以上取得できます。
(4)所定外労働の制限(残業免除)
所定外労働とは、就業規則などで定められている勤務時間を超える労働(残業)のことです。
回数の制限はなく、1回につき、1か月以上1年以内の期間で残業が免除されます。
(5)時間外労働の制限
時間外労働とは、法定労働時間(原則1日8時間、1週間で 40時間)を超える労働のことです。
回数の制限はなく、1回につき、1か月以上1年以内の期間で免除されます。
(6)深夜業の制限
深夜業とは、午後10時から午前 5 時までの労働のことです。
回数の制限はなく、1回につき、1か月以上 6か月以内の期間で免除されます。
5.周辺の介護施設を調べておく
本人が希望しても、経済的または介護状態によって入所できないこともあります。
人気が高い特別養護老人ホームは待機期間が長くなりがちのため、介護が必要でない時期から見学に行ってもいいでしょう。
「みんなの介護」などの検索サイトを活用すると、場所や料金の他、介護状態によって対応できる施設が分かります。
6.日頃から家族や親せきとコミュニケーションをとる
コミュニケーションをとっていれば、親の健康状態を伝えたり、介護になったときの方針や役割分担、資産を管理する人などを決めておくことができます。
7.介護費用に備える
(1)高額介護サービス費の利用
月の自己負担限度額が一定額を超えたとき、超過分が払い戻されます。
月の自己負担限度額は、15,000円~44,000まで各世帯の所得状況によって異なりますので、調べておくとよいでしょう。
「負担限度額認定書」がある場合は、超過分の請求自体がなく、払戻しはありません。
(2)民間の保険への加入
「介護保険」や「認知症保険」などは、一定の状態になったときに保険金が支払われます。
(3)代理人、家族信託、後見人の設定
認知症になった場合、本人の資産は凍結されてしまいます。
銀行預金の入出金に「代理人」、不動産売却に「家族信託」「後見人」を設定しておくのも一案です。
※費用の捻出が難しいときの対策
(1)特定入所者介護サービス費制度の利用
介護保険が適用される施設に入所する方のなかで、所得や資産が一定以下だった場合に適用される制度があります。
負担限度額を超える居住費・食費が発生した場合、超過分の費用が介護保険から賄われます。
(2)自治体の融資制度の利用
「生活福祉資金貸付制度」という融資制度があり、500万円を上限に融資をうけることができます。
(3)リバースーゲージ
自宅に住み続けながら、その自宅を担保に老後資金の借入れができる制度があります。
毎月利息のみを返済し、契約者が亡くなった後は担保になっていた自宅の売却代金で借入金を返済する仕組みです。
変動金利の上昇、毎年見直される担保評価の下落、長生きによる借入額超過などのリスクがあるため、利用には注意が必要です。
(4)リースバック
リバースモーゲージと同様、自宅に住み続けることができますが、自宅は売却するため売却後は賃貸として家賃を払わなければなりません。
立地条件によっては賃貸料が高額になったり、賃貸借契約の打ち切りなどで住み続けられないリスクもあるため、利用には注意が必要です。
(5)親の住まいの売却
特に施設介護の場合は空き家になった住まいの維持費がかかりますので、選択肢の一つになるでしょう。
まとめ
介護は、ある日突然やってきます。
施設への入居など介護費は思いのほか高額となり、介護者の生活が苦しくなることもあります。
相続もそうですが、元気なときでないと備えは難しいものです。
親御さんには「もし介護が必要になったとき、どうサポートできるか考えておきたい」など介護支援の意志をはっきりと伝え、いっしょに準備をしておきたいものです。
※実際の行動は、ご自身の判断でお願いします。
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